(1) Fw190 A-3, エーリッヒ ルドルファー中尉,6/JG2中隊長,ビューモン・ル・ロージェ/フランス,1942年8月19日。
機体はRLM 74/75/76の通常のグレー迷彩です。文献1の写真を見ると,排気のススは黒塗装より少しはみ出しており,かつ主翼フィレットの一部にもかかっています。キルバーの色は、彼のMe109Fと同様赤と思われます。ラダー右側のキルマークは確認出来ませんが,モデラーの方がそう選ぶ場合に備え入れてあります。この機体は後にラダーに大きな損傷を受けました(文献2)。ルドルファー中尉は大戦を生きぬき,合計224機の撃墜を記録しました。

(2) Fw190 A-7,アドルフ・グルンツ曹長,5/JG26,カンブレイーエピノイ/フランス,1943年。
機体はRLM 74/75/76の通常のグレー迷彩です。当時彼は5/JG26の所属でしたが,この機体は"白−9"です(第5小隊機の機番は通常赤か黒です)。9の字体は後の彼の乗機黒−9のように丸みのあるタイプで描かれていますが(たとえば文献3),文献1, p.247の写真から明かな様に角張ったタイプが正しいです。ラダー右側のキルマークは確認出来ませんが,モデラーの方がそう選ぶ場合に備え入れてあります。彼は騎士鉄十字章を1943年8月29日に受け,合計72機撃墜を記録しました。また彼は戦闘で一度も撃墜されなかった珍しい記録を持っています。

(3) Fw190 D-9,ハンス・ウルリッヒ・ルーデル大佐,SG2航空団司令官,グロッセンハイン/ドイツ,1945年4月。
ただ一人の宝剣付き黄金柏葉騎士鉄十字章受賞者ハンス・ウルリッヒ・ルーデル大佐は,大戦末期Fw190 F-8とD-9を操縦していました.彼のD-9は文献4のピントの甘い写真に写っており,たぶん通常のRLM 83/75/76の迷彩と思われます。F-8の指揮官記号は細い黒縁がついていますが(文献5),この機体にはついていないようです。さらに写真をよく見ると指揮官記号は直線状に並んではおらず,ドイツ空軍では珍しい例です。(このイラストは写真を正確にトレースしたものです)。彼の撃墜スコアは9機または11機です。

(4) Fw190 D-9,ギュンター・レイ伍長,11/JG54,フュルステナウ/ドイツ,1945年1月1日.
私たちはこの機体の写真を見つける事は出来ませんでしたが,この機体は文献6中の記事にイラストとともに紹介されています。イラストでは初期キャノピー付きとなっています。説明文によりますと,この機体はW. Nr. 210000台のD-9初期生産バッチの1機で,RLM 83/75/76で迷彩され,RLM 81/83のモットリングを胴体側面に施しているとあります。レイはこの機体をボーデンプラッテ作戦の直前に受領しましたが,時間がなくてIII/JG54エンブレムと彼のパーソナルマーク(ケルンの大聖堂)を記入しただけでJG54の青のRVD帯は記入しませんでした.イラスト中にあるケルンの紋章は正規のものではないため,正規のもの(56b)とイラスト中にあるもの(56c)を入れてありますので選んでください。 限られた情報しかありませんが,これはパーソナルマークを施したD-9の珍しい例です。

考証にあたり、松樹祐司氏にご協力頂きました。ここに厚く感謝します。